TOP > 「開港の道・山下臨港プロムナード」
2008年09月16日
「開港の道・山下臨港プロムナード」とインフォメーションに書かれた狭い階段を上ると、急に潮風が吹き込んで視界が広くなる。
私が立つのは、過去と未来のヨコハマを結ぶ、かけ橋のような歩道橋。
「開港の道」とは(出発点)桜木町→新港地区→港の見える丘公園までの遊歩道をいうが、毎日犬を連れて散歩する私のテリトリーはもっぱら「山下臨港線プロムナード」エリア。(もっと柔かい、響きのよい名前にすればいいのにな)大桟橋の手前から階段を上った橋の上は絶景ビューポイント。

大勢の人が100%ハマ風を感じながら歩き、立ち止まっては、桟橋に入る船を眺めたり、歩道橋の両端の、古いヨコハマと新しいヨコハマを見比べて想いに耽っている。


サマータイムは終わりを告げたのに、眼下の海には白い腹を光らせてしきりに魚がジャンプ。パシャンという水しぶきの音、ときおりこだまするウミネコの鳴き声と、汽笛の音が交錯する。
大桟橋には、今日は日本船籍の客船〈パシフィックビーナス〉と、煙突から黒煙をたなびかせた、〈ピースボート・クリッパーパシフィック〉二隻が停泊している。
客船の手前には開発中の〈象の鼻〉(*象の鼻のように湾曲した、石積み防波堤。荷あげおろしの船着場でもあったらしい)が横たわり、沖をのどかに行き交うマリンルージュとマリンシャトル、ロイヤルウイング、シーバス、タンカー、巡視船そして小舟を静かに見送っている。


この歩道橋の魅力は、橋のあちらとこちらで、世界が違うことだ。開港側を見れば、オンボロ、失礼!〈マリン倉庫〉〈大桟橋診療所〉〈波止場会館〉と名前も昭和な古くさいオンボロビルばかりだが、これが魅力だ。どこもかしこも新しいものばかりになってしまっては、ハマの魅力は語れないのである。
裏ぶれた風情の建物からは、昔流行っていたスーツ姿のかっこいい刑事とか、コミカルでクセのある探偵とかが現われそうで。…いつかはとり壊しの憂き目に合うだろう。更地になった後は何が建つ?捕らぬ狸の心配事だが、いつまでも波止場の“味”を失わずにいてほしい。
〈象の鼻〉地区はただいま開発中で、来年150周年には公園になるそうだ。ぜひ余所にないミナトヨコハマの〈美〉を盛り上げるものであってほしい。

たそがれの迫る5時、パシフィックビーナスが、3度汽笛を鳴らし出航した。
大桟橋は屋上まで見送りの人々で埋まり、こちら側にも歓声が伝わるよう。別れの曲とテープに送られ、岸壁を離れて行く光景は遠くから観ていても趣がある。豪華客船はいつ見ても〈港の華〉だ。

みなとみらいにちらほらと灯り始めたオレンジ色の灯は、これから始まるきらびやかな夜への、プロローグ。
過去と未来のヨコハマを、船乗り達のミューズ・クイーン(税関)(※昔、船は海上からキング・ジャック・クイーンの三塔を目印に入港した)が、美麗な外観は当時のままに、歩道を歩く人と港を見つめている。
箱のような今時のビルに取り囲まれて建つ、クイーンにしても、キングにしても、ジャックにしても、石造りのヨーロッパ調建造物は、建築者の息吹が伝わってくる美術品である。
錦絵でしか見られない開港当時の街並の一片を見る気がする。


秋晴れの休日にはゆっくりと桜木町からスタートして、ハマ風にハミングしながら、港の見える丘公園まで、全コース散歩するのもいいだろう。
私と犬のダイエットも兼ねて。
